犬に噛まれた場合の慰謝料請求のための内容証明

犬に噛まれた(咬傷)場合の慰謝料請求

ayaさん
先生、久しぶり!ちょっと相談なんだけど、私の弟が犬に噛まれて怪我をしたの。。

gyoseishoshiさん
アヤちゃん、しばらくぶりだね。犬に噛まれたのか。病院に行った?

ayaさん
右手を噛まれて全治1ヶ月だって・・・。

gyoseishoshiさん
それはひどいね。。

ayaさん
そこで犬の飼い主にせめて治療費くらいは出してもらいたくて・・。

gyoseishoshiさん
もちろん治療費も請求できるけど、併せて、損害賠償請求も行っていこう。

ayaさん
よかった!ところで、先生、犬の飼い主の責任はどのように考えるの?

gyoseishoshiさん
民法718条1項を見てみて。

ayaさん
六法全書を持ってきてっと。。

第718条
動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負う。
ただし、動物の種類及び性質に従い相当の注意をもってその管理をしたときは、この限りでない。

gyoseishoshiさん
ここに、「動物の占有者」は、動物が他人に加えた損害の賠償責任を負う、と書いてあるでしょ?

ayaさん
うん。うん。

gyoseishoshiさん
この規定でアヤちゃんの弟を噛んだ犬の飼い主が責任を負わされる余地があるっていうことになるんだ。

ayaさん
そういうことなんだ。でも、ただし書のところに不安になることが書いてあるよ。

gyoseishoshiさん
このただし書は飼い主が犬が他人に危害を与えないように、それなりの注意をしていた場合には損害賠償責任を負わない、ということが書いてあるんだ。

ayaさん
でも、弟の場合は飼い主がリードをつけずに公園を散歩してたのよ。

gyoseishoshiさん
そうだね。このような場合は、飼い主が「相当の注意をもってその管理をした」ということはできないと考えられる。

ayaさん
ホッ。よかった~!

gyoseishoshiさん
アヤちゃん、でもね、民法722条2項を見てみて。

第722条
2 被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。

ayaさん
過失。。

gyoseishoshiさん
そうなんだ。民法722条2項は過失相殺の規定で、これは、犬に噛まれた弟にもし、不注意があった場合には損害賠償額が減額されることになるんだ。

ayaさん
噛まれた弟側にも落ち度があれば損害賠償額が減額されるっていうことね。

gyoseishoshiさん
そうそう。アヤちゃんの弟はお昼休みに公園でベンチに座ってご飯を食べていただけだから落ち度なんてないけど、噛まれた側が犬にちょっかいを出したとか、何かしらの落ち度があれば減額対象になる、ということなんだ。

ayaさん
先生、よくわかったよ。ありがとう。

ayaさん
・・・。

ayaさん
うーん、先生、もう1つちょっと気になったんだけど、いいかな?

gyoseishoshiさん
いいよ、どうしたの?

ayaさん
私の場合は、弟だから相手に損害賠償請求ができたんだけど、これが自分が飼っている犬に他の飼い主の犬が噛み付いた場合はどうなるのかな?

gyoseishoshiさん
うん、犬が犬に噛み付いた、ということだね。

ayaさん
最近、犬をわが子のように可愛がっている家って多いから。。私の隣の家の人もそうなのよ。

gyoseishoshiさん
結論からいうと、慰謝料請求はできる余地が十分にある。

gyoseishoshiさん
アヤちゃんが言ったように、わが子のように飼い犬を可愛がっていて、その飼い犬が噛まれて重大な障害を受けたり亡くなったりしたことによる精神的苦痛は保護に値するものであり、慰謝料請求ができると考えられるんだ。

ペットとして飼われている犬や猫は、毎日の疲れをかわいい姿で癒してくれます。
その一方で、人間と動物が共存していることから、残念なことですが、必然的或いは偶発的な咬傷事故も起こってしまいます。

ペットの咬傷事故の代表的な例は、

  • リーシュ(リード)をしていたが注意が十分でなく犬が人間に咬みつく
  • 庭で飼っていた(繋留していた)犬が玄関先で人間に咬みつく
  • 放し飼いをしていて犬が人間に咬みつく
  • 保管上の不注意で犬が逃げ出した時に人間に咬みつく
  • 幼児が犬に手を出した

事例が圧倒的に多いです。

咬傷事故においては場合によっては消えない醜状痕や体の一部を切断するような事案もあります。
犬に噛まれた(咬傷)場合の事故は、損害補填の制度もなく、当事者間の協議が上手く進まないことも往々にしてあります。

また、咬傷事故ではなくても、吠えた犬に驚いたことから受けた2次的被害においても、相当因果関係が認められる範囲で損害賠償を認定した事案もあります。

犬の飼い主の過失について

犬に噛まれた場合の内容証明郵便

咬みつき事故には、民法718条1項の規定により動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負うとしており、但書によって、動物の種類及び性質に従い相当の注意をもってその管理をしたときは、この限りでないと規定しています。

すなわち、犬の飼い主が動物の種類及び性質に従って通常払うべき程度の注意義務を尽くして動物を飼育していたことを立証できた場合には、損害賠償責任を免れるとする規定です。

これには、判例上、動物の種類、年齢、動物の性質、年齢、動物の性質、雌雄、性癖、病気、動物の加害前歴、占有者又は保管者のその職業、保管に対する熟練度、動物の訓致の程度、加害時における措置態度等、保管の態様、に加えて被害者側の被害時の状況、警戒心があったか、被害誘発があったかなどを総合考慮して判断していきます。