消滅時効援用の内容証明郵便

消滅時効の援用をする

消滅時効とは、法律上の権利が一定期間を経過することによって権利が消滅してしまう法制度のことをいいます。
つまり返済義務が無くなるということです。

しかし、消滅時効は、法律で定められた一定の期間が経過すれば当然に効力を発揮するというわけではありません。

 

消滅時効を主張するには、援用する必要があります。債権者に消滅時効援用の意思表示をする、と伝えることが必要であり、消滅時効が成立しても、それを援用しなければ債務自体消滅しないのです。
この意思表示を、時効の援用といいます。

時効を成立させるには内容証明郵便で時効の援用通知書を相手方に送る必要があります。

サラ金会社、信販会社、銀行などの貸金債権(商事債権)は5年で消滅時効にかかり、友人や知人、親など個人からの借り入れの場合(民事債権)は10年であることから、消滅時効は10年と安易に考えている方も結構多いですが、10年より時効期間が短いいわゆる短期消滅時効もありますので注意が必要です。

時効制度の趣旨について

時効の趣旨を理解して時効援用しよう

時効制度の趣旨として、以下の3点が考えられます。

  1. 永続した事実状態の尊重

    一定の事実状態が永続するときは,社会はこれを正当なものと信頼し、それを基礎に種々の事実関係・法律関係を形成することから、社会の法律関係の安定の見地から一定の期間継続した事実状態は、法律関係として覆さないことが正当だとする考え方です。
  2. 権利の上に眠る者は保護しない

    一定期間、自らの権利を主張せず、維持するために必要な措置を講じない、権利の上に眠っていた者に対しては、法律上保護されないとする考え方です。
  3. 立証困難の救済

    長期間の経過によって確実な証拠によって判断するのが困難なことが往々にしてあります。

    時効制度を証明困難の救済を根拠とする考え方です。

消滅時効の期間、権利行使の期間一覧

時効の期間と内容証明

期間 消滅する権利・行使できなくなる権利
3ヶ月 相続の限定承認・相続放棄
6ヶ月 消費者契約法の取消権、小切手債権、不渡り手形を受戻した裏書人から他の裏書人に対する請求
1年 1月以内の短期労働者の給料債権、飲食代、運送費、ホテル・旅館等の宿泊料、ビデオ・CD等のレンタル料、レンタカー等の料金、手形所持人から裏書人に対する請求
2年 給料債権、商品売買代金、離婚による財産分与、職人及び製造人の仕事に関する債権、理容師・クリーニング業者などの代金債権、弁護士・公証人の債権、商人(企業)間の売掛金債権、学校・塾などの授業料
3年 不法行為による損害賠償請求権・慰謝料請求権、PL法に基づく損害賠償請求、請負代金債権、自動車修理代金、医師・助産師・薬剤師の代金債権、弁護士・弁護士法人・公証人の書類返還義務、、約束手形の振出人・為替手形の引受人に対する手形債権
5年 商事上の債権(商取引による債権、商人間の債権、サラ金などの貸付)、退職金債権、利息債権、会社が行う貸付金債権、クレジット債権、家賃、地代債権、定期金債権、相続回復請求権
10年 民事上の債権(個人間の貸金、個人間の売買代金)、判決で確定した債権
20年 債権・所有権以外の財産権(地上権、永小作権、地役権等)

時効の中断事由について

時効の中断について

時効の中断事由として大きく3点があげられます。

  1. 債権者からの請求
  2. 裁判上の請求

    • 訴訟の提起
    • 支払督促の申立て
    • 民事調停の申立て
    • 即決和解の申立て
    • 任意出頭による訴え
    • 破産手続き参加
    • 更正手続き参加
    • 再生手続き参加

     
    裁判外の請求(中断の効力は6ヶ月)

    • 内容証明郵便
    • 内容証明郵便による時効援用

    請求は裁判上の請求(訴訟・支払督促など)と裁判外の請求があります。

    裁判上の請求は通常の手紙、ハガキ、電報、内容証明郵便での請求書や督促状を送っただけでは裁判上の請求とはならず、裁判所へ訴訟を提起したり、支払い督促をするなどの法的手続を行わなければなりません。

    一方で裁判外の請求は、内容証明郵便で請求書、督促状、訴訟予告通知などの送付をし、催告することによって行います。
    催告をすると催告後6ヶ月以内に、時効中断事由となる訴訟上の請求などをすることにより時効が中断します。

     

  3. 差押え、仮差押え、仮処分
  4. 債権者が、債務者の財産について、差押え、仮差押えまたは仮処分の手続きを行った場合は、時効の起算はまた0から始まることになります。

     

  5. 債務の承認
    • 債務承諾書
    • 一部弁済

    消滅時効の場合の債務の承認とは、時効の利益を受ける債務者、保証人などが権利の存在を権利者に認めることをいいます。

消滅時効の効果について

時効援用の効果について

消滅時効の完成により、その効果は、起算日に遡ります。

すなわち、時効の完成によりその効力は権利を行使し始めたときにさかのぼることになります。

起算日から、消滅していたことになるので、債権者は人に貸しているお金を取り立てることはできなくなり、債務者(借金のある方)は借金が無くなることになります。

消滅時効の参照条文

時効援用に関連する法律

<民法>

(時効の援用)

第百四十五条 時効は,当事者が援用しなければ,裁判所がこれによって裁判をすることができない。

(時効の中断事由)

第百四十七条 時効は,次に掲げる事由によって中断する。

一 請求

二 差押え,仮差押え又は仮処分

三 承認

(催告)

第百五十三条 催告は,六箇月以内に,裁判上の請求,支払督促の申立て,和解の申立て,民事調停法 若しくは家事審判法による調停の申立て,破産手続参加,再生手続参加,更生手続参加,差押え,仮差押え又は仮処分をしなければ,時効の中断の効力を生じない。

(債権等の消滅時効)

第百六十七条 債権は,十年間行使しないときは,消滅する。

2 債権又は所有権以外の財産権は,二十年間行使しないときは,消滅する。

(消費貸借)

第五百八十七条 消費貸借は,当事者の一方が種類,品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって,その効力を生ずる。

(返還の時期)

第五百九十一条 当事者が返還の時期を定めなかったときは,貸主は,相当の期間を定めて返還の催告をすることができる。

2 借主は,いつでも返還をすることができる。

(不当利得の返還義務)

第七百三条 法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け,そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は,その利益の存する限度において,これを返還する義務を負う。

(不法原因給付)

第七百八条 不法な原因のために給付をした者は,その給付したものの返還を請求することができない。ただし,不法な原因が受益者についてのみ存したときは,この限りでない。

<商法>

(商事消滅時効)

第五百二十二条 商行為によって生じた債権は,この法律に別段の定めがある場合を除き,五年間行使しないときは,時効によって消滅する。ただし,他の法令に五年間より短い時効期間の定めがあるときは,その定めるところによる。

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