子どものいじめ等学校事故の慰謝料請求

子どものいじめ等学校事故の慰謝料請求

hayasakaさん
先生、子どもが学校でいじめにあってケガをした場合は相手の親に対して慰謝料請求できるのかな?

gyoseishoshiさん
早坂さん、何かあったの?

hayasakaさん
最近、いじめも陰湿になっていて、ウチの子どもの友達もいじめを受けているようなんだ。
いじめをしている子どもは素行が悪くて、たびたび補導されている子で心配なんだよ。
親にも再三言っているんだけどね。

gyoseishoshiさん
・・・。


hayasakaさん
・・・。


hayasakaさん
法的に相手の親に慰謝料請求は可能なのかな?

gyoseishoshiさん
結論からいうと、相手の親に慰謝料請求、損害賠償請求はできる。

gyoseishoshiさん
早坂さん、民法714条を見て。

第714条
1 前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。
ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2 監督義務者に代わって責任無能力者を監督する者も、前項の責任を負う。

gyoseishoshiさん
民法714条で未成年者に責任能力がない場合は親が子どもに代わって損害賠償の責任を負うと規定しているんだ。


hayasakaさん
子どもの不祥事は一定程度親が責任を負う、というものなんだね。

gyoseishoshiさん
そうなんだ。ちなみに、早坂さんの子どもさんは何歳なの?

hayasakaさん
中3。

gyoseishoshiさん
中3か。。


hayasakaさん
中3だったら責任能力があると言えるのかな??

gyoseishoshiさん
ないとはいえないね。

hayasakaさん
・・・。


gyoseishoshiさん
中3の子どもを責任能力がないといって民法714条の規定を使うのは無理があると思う。

hayasakaさん
・・・。


gyoseishoshiさん
でも、民法709条によって親に慰謝料請求と損害賠償請求ができる余地はある。

hayasakaさん
そうなの!?


gyoseishoshiさん
うん。いじめをしている子どもの親は子どもの素行が悪いのをわかって放置していて、子どもが悪さをしないように監督して事故を起こさないようにすべきなのに怠っているからね。

hayasakaさん
なるほど。安心したよ。


gyoseishoshiさん
ただ、絶対に起こってはいけないことだけど、いじめを苦にして自殺したような事案では、親に責任をとってもらうためにはその親が死亡に至るまでの予測可能性があったといえることが必要となってくるんだ。

hayasakaさん
子どもが死亡する結果まで予測できたか、ということなんだね。

gyoseishoshiさん
うん、うん。


hayasakaさん
先生、じゃあ、教師に損害賠償請求はできるの?

gyoseishoshiさん
その場合は学校が国公立か私立かによって変わってくるね。

hayasakaさん
そうなんだ。国公立の学校の場合はどうなるの?

gyoseishoshiさん
国公立学校では、公務員が職務上で他人に損害を加えた場合は、国・公共団体が賠償責任を負担する規定(国家賠償法1条1項)があって、その場合は公務員は責任を負わなくていいから、教師に対する損害賠償請求はできない、ということになるんだ。

hayasakaさん
国公立学校の場合は教師に損害賠償請求はできない、ということなんだね。

gyoseishoshiさん
そういうこと。一方で、私立学校の場合は、損害賠償請求はできる余地があるんだ。

hayasakaさん
そうなんだ!

gyoseishoshiさん
早坂さんの子どもの同級生の事案のように、たびたび悪さをしているような素行の悪い子どもであって、親がそのことを教師に告げているのに放置したような場合は、教師に課せられる安全保持義務違反があったと評価できるね。

hayasakaさん
安全保持義務違反・・・。

gyoseishoshiさん
そうであれば、民法415条の債務不履行責任の追求又は民法709条の不法行為責任の追求をおこなって、この教師に損害賠償責任を追及することはできる。

gyoseishoshiさん
さらに、子どもがもっている損害賠償請求権も相続することで固有の損害賠償請求権と共に責任追及ができることになるんだよ。

hayasakaさん
でも、先生、教師に損害賠償請求しても、賠償請求の額が高額となって教師が払うことができない場合もあるんじゃないかな?

gyoseishoshiさん
その可能性はあるね。では、教師ではなく学校に損害賠償請求ができるかどうか考えてみよう。

hayasakaさん
メモ、メモっと。。

gyoseishoshiさん
学校に損害賠償請求をする際にもさっき言ったように、国公立か私立かによって変わってくるんだ。

hayasakaさん
国公立学校の場合は損害賠償請求ができないってこと?

gyoseishoshiさん
ううん。国公立学校には国家賠償法1条1項の規定によって学校に責任追及ができるんだ。一方で、私立学校は国家賠償法が妥当しないので、この規定で責任追及はできないことになる。引用してみたから目を通しておいてね。

国家賠償法第1条
1 国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。

hayasakaさん
それはそうだよね。。


gyoseishoshiさん
そこで、私立学校の場合は、民法715条の規定により、学校に対しては使用者責任を追及していくことになるんだ。下に書いた引用を見ておいてね。

民法第715条
1 ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。

hayasakaさん
民法715条の規定で使用者責任を追及できるんだね。

gyoseishoshiさん
うん。うん。

hayasakaさん
先生、いじめが学校の授業中とかだったらさっき話したように損害賠償請求ができるのはわかったんだけど・・・。

gyoseishoshiさん
わかったんだけど??

hayasakaさん
いじめ自体が放課後とか休み時間であっても損害賠償請求はできるのかな?

gyoseishoshiさん
要するに、放課後等の問題は教師や学校に責任がないんじゃないかっていうこと?

hayasakaさん
その可能性はあるな、と思ってね。

gyoseishoshiさん
その場合でも賠償請求はできる余地が十分にあるね。

gyoseishoshiさん
課外であっても、子どもや親の申告でいじめの存在を知っていたり、子どもが学校に来なかったこと等の事情からいじめの存在を知ることができた、と評価できる時には教師には子どもの安全保持義務が課せられるので、賠償請求をすることができるんだ。

hayasakaさん
なるほどー。

wataruさん
先生、久しぶり!

gyoseishoshiさん
お~!ワタルくん、久しぶり!!

hayasakaさん
ワタル、元気そうだね。

wataruさん
外で途中から話を聞いていたんだけど、学校が終わった後のクラブ活動ってあるじゃない?

hayasakaさん
あるある。

wataruさん
クラブ活動中のケガなんかは教師や学校に損害賠償請求はできるのかな?

gyoseishoshiさん
課外のクラブ活動でも、顧問の教諭、学校側には事故の発生を未然に防ぐ一般的な注意義務が課せられるんだ。

wataruさん
うんうん。。

gyoseishoshiさん
でも、クラブ活動は生徒の自主性を尊重すべきものであるから事故の発生の危険性を具体的に予見可能な特段の事情がなければ顧問の教諭は個々の活動に常時立ち会って監視指導すべき義務まで負わない、ということを最高裁が判断しているんだ。

hayasakaさん
事故の発生の危険性を具体的に予見可能できたかということなんだね。

wataruさん
そういうことなんだね。・・・先生、もう一つさ、最近体罰で問題になる事多いじゃない?

gyoseishoshiさん
確かに多い。よくTVとかで問題になっているよね。

wataruさん
体罰を受けてケガをした場合って学校に損害賠償請求ができるの?

gyoseishoshiさん
結論からいうと、損害賠償請求はできる。

gyoseishoshiさん
教師は学校教育法11条の規定に基づいて生徒を懲戒することはできるんだ。

学校教育法第11条
校長及び教員は、教育上必要が認められるときは、文部科学大臣の定めるところにより、児童、生徒及び学生に懲戒を加えることができる。ただし、体罰を加えることはできない。

gyoseishoshiさん
もう1つ、よいしょっと。

学校教育法施行規則第第13条
1 校長及び教員が児童等に懲戒を加えるに当っては、児童等の心身の発達に応ずる等教育上必要な配慮をしなければならない。

gyoseishoshiさん
学校教育法施行規則第第13条1項にあるように、懲戒をするには、「児童等の心身の発達に応ずる等教育上必要な配慮」しなければならないのであって、体罰は許されないという考え方になる。

wataruさん
うん、うん。

gyoseishoshiさん
この教師が持つ懲戒権を超えて体罰をすることによって生徒が怪我をしたということになれば学校に対して損害賠償請求を行うことはできるんだ。